『祖母の退化論』東京公演

(京都公演 撮影:守屋友樹)

原作|多和田葉子(『雪の練習生』より)
演出|和田ながら(したため)
出演|布施安寿香(SPAC)

かつてサーカスの花形だったホッキョクグマの「わたし」は、ひょんなことから自伝を書きはじめた――俳優・布施安寿香が、奇妙で軽やかなユーモアにあふれる小説「雪の練習生」(作:多和田葉子)の第一章「祖母の退化論」をひとり芝居として上演します。
ひとり芝居に挑戦したい。多和田葉子の言葉を食べてみたい。という布施の強い衝動からはじまったこのプロジェクトは、2020年の京都、2021年の静岡、三重と旅を重ね、作品を深化させてきました。演出を手掛けるのは、テキストへ逐語的にあたることから俳優の身体にアクセスしていく和田ながら。
たったひとりの声と身体で編まれていく、緻密で豊穣な演劇を、ぜひ。


俳優より 

《電車は変にすいていて、窓ガラスがあまりに厚いので景色がゆがんで見えた。その時、額に何か小さなものが当たった。蠅かと思ったら、一つの文章だった。「これは亡命なのだ。」》

命を亡くすと書いて亡命。亡くすのは国じゃないらしい。命を失わないために逃げるんじゃないのかな。知った顔で亡命なんて言葉を使っていたけれど、ふと立ち止まってみると不思議な言葉だし、そもそも亡命のことなんて何もわかっていない。
額に蠅が当たるくらいの軽さで言葉が降ってくる。その気軽さに身体をゆるしているとものすごい衝撃が走る。演じる楽しみというのは、異物である言葉と出会って肉体が変わっていくことだと思う。変わるというのは大変なことだ。言葉を異物として扱い続けることが難しい。すぐに所有物のように当たり前のものとしてつきあってしまう。だってその方が楽だから。俳優は上手くなればなるほど使いこなせる力を持ってしまうから、なお危険。
でも、多和田さんの言葉もながらさんの演出も楽できないようになっていて、幸せだなと思う。
再演できることが本当に楽しみです。ご来場お待ちしています。

布施安寿香


日程
2023年3月
17日(金)19:00
18日(土)19:00
19日(日)15:00
*上演時間 約110分

会場|PARA神保町東京都千代田区神田神保町2-20-12 第二冨士ビル 2階
*東京メトロ半蔵門線/都営新宿線、三田線 神保町駅 A3出口より徒歩3分
*JR 総武線 水道橋駅 東口より徒歩8分
*JR 中央線、総武線 御茶ノ水駅 御茶ノ水橋口より徒歩13分
※会場まではビル内の階段を利用してご来場ください。

料金|一般 6,000円
   学生 2,000円
※PARAフリーパス使用可・レクチャーコース、劇場ゼミコースイベント無料適用
※予約開始:2023年2月9日(木)

音響|甲田徹
照明|神谷怜奈(神谷オフィス)
舞台監督|吉見亮
演出助手|濱吉清太朗(紙魚)
フライヤーデザイン|村上慧
PARA|岸井大輔、青田亜香里、旦妃奈乃、堀切梨奈子
 
主催|PARA、布施安寿香、和田ながら
協力|シバイエンジン
助成|公益財団法人セゾン文化財団

お問合せPARA


PARA2Fオープン公演『祖母の退化論』関連トークイベント

 2月13日(月)19:30-21:30
「多和田葉子を演出する」川口智子、和田ながら
 3月5日(日)15:00-17:00
「劇場は可能か シーズン1にむけて」佐藤信、横山義志、岸井大輔 
3/18(土)※時間未定
「劇場を開くには?」 成河、田中里奈

チケット
【オープントーク3本+『祖母の退化論』通し券】一般|8,000円 学生|3,000円 
【オープントーク各回単体】一般|3,000円 学生|1,500円


 ●プロフィール

©Takashi KATO

布施安寿香 ふせ・あすか
1980年生まれ。2002年、ク・ナウカシアターカンパニー(宮城總主宰)入団、2006年よりspac(静岡県舞台芸術センター)に所属。主な出演作に『夜叉ヶ池』『冬物語』『アンティゴネ』『ハムレット』(演出:宮城聰)『ガラスの動物園』『盲点たち』(演出:ダニエル・ジャンヌトー)『室内』(演出:クロード・レジ)などがある。近年は言語と身体の興味から演劇の枠を広げようと、ミュージシャンやダンサーとのコラボレーションなどもしている。静岡の作曲家渡会美帆とのユニット「帆香」や名古屋の舞踏家浅井信好主宰の「月灯りの移動劇場」では出演だけでなく演出もしている。

和田ながら わだ・ながら
京都造形芸術大学芸術学部映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院芸術研究科修士課程修了。2011年2月に自身のユニット「したため」を立ち上げ、京都を拠点に演出家として活動を始める。主な作品に、作家・多和田葉子の初期作を舞台化した『文字移植』、妊娠・出産を未経験者たちが演じる『擬娩』(2019)がある。美術家や写真家、音楽家など異なる領域のアーティストとも共同作業を行う。2018年より多角的アートスペース・UrBANGUILDのブッキングスタッフ。2020年より鳥公園アソシエイトアーティスト。NPO法人京都舞台芸術協会理事長。2021-22年度セゾン文化財団セゾン・フェローI。


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