『埋蔵する』『ふるまいのアーキビスツ』三都市ツアー

公演は全日程を無事に終了いたしました。ありがとうございました。


京都を拠点に活動を展開するユニット・したためが、劇作家・岸井大輔の戯曲からつくったふたつのひとり芝居をみっつの街(上田、京都、東京)で上演します。宣言文のようだったり、辞書の定義のようだったり。一読しただけでは上演の具体的なイメージを結びづらい戯曲が、俳優と演出の共同作業によって、したため流のポップでキュートなパフォーマンスに。戯曲のおもしろさ、演技の楽しさ、俳優の魅力を味わっていただける二本立て。全回、終演後には演出家とゲストによるトークの時間も設けます。
したための夏の旅、ぜひお付き合いください!

紙の雑誌も消えていき、ゆっくり考えることがほとんど不可能な世相に、どうあれるのか、と上演芸術は尋ねられているのだと思います。
岸井大輔(劇作家)

ただでさえ上演ができないように書かれているふたつの戯曲が、去年おととしと二度もつづけて新しいウイルスの蔓延による上演不能に阻まれ、今年が三度目の正直。この間、ずっとずっと思い出しなおしつづけてきた、いずれも徹底してレガシーについての作品です。
和田ながら(演出家)



戯曲全文

『埋蔵する』

 石に下記文字を記し、土中に埋める。

この石に刻まれた文字は戯曲です。2500年を超えたギリシャのせりふがいまだ上演されるように、何千年かの後、演劇という言葉がなくなるか今とまったく違うように理解され、作品という言葉もなくなるか今とまったく違うように理解されているにもかかわらず、この石を見つけた誰かが、この言葉を写しとり、また写し取った誰かによって、上演されるでしょう。


『ふるまいのアーキビスツ』

1 俳優を、ふるまいのアーキビストと捉えてみる。

2 アーキビストとは、アーカイブをする人のことで、永久に保存する価値のある情報を、選んで、集めて、整理して、保存して、管理して、見ることができるよう整える専門職をさす。よって、人間のふるまいを人間がやって残しても、アーキビストの仕事とは遠いとされるだろう。しかし、日本において、建物や制度や芸術作品よりも、それらを作る技術の方が事実上⻑く保存されてきている。つまり、日本でアーカイブを考えるのならば、物体ではなく、ふるまいの継承において考えられるべき事だ。それは、かつてのふるまいを、リプレゼンテーション=再演/上演可能なふるまいとして継承することを意味する。

3 ふるまいは、個人の行動だけでなく、状況における行動をさす。状況には他人も含まれる。よって、俳優は、ふるまいをアーカイブするために、集団になる必要がある。また、その状況も含めてアーカイブするために俳優以外の人も必要になる。そして、ふるまいをアーカイブするとは、動きをトレースするだけでなく、そのふるまいの意義や状況など、意味するところも含めてアーカイブすることが使命である。

4 俳優は、わざおぎという古語の当て字である。わざは技であり、おぎは招くの意味だ。即ち、神を招く技をもつものを俳優(わざおぎ)と呼んだ。そして、多くこの職業は滑稽芸や曲芸をやったという。天岩戶や神道の葬式から考えるに、日本では神を招くためにこそ滑稽な技を使ったのだろう。私は、この言葉を、消えて行くものとしての先祖やオーラのような、ある状況のふるまいに伴う意義をも含め再現する、すなわちその場に招く技をもった存在と捉える。

5 ここでいう俳優はアクターでもプレイヤーでもない。

 

|岸井大輔
演出|和田ながら
出演|諸江翔大朗(ARCHIVES PAY/『埋蔵する』)、長洲仁美(『ふるまいのアーキビスツ』)
演出助手|坂井初音
照明(上田公演)|伊藤茶色(合同会社 犀の角)


上田/犀の角公演 

日程|2023年7月
7日(金)19:00 終演後トークゲスト:荒井洋文(犀の角)
8日(土)14:00 終演後トークゲスト:岸井大輔(劇作家)
※開場は開演の30分前。
上演は95分程、休憩込み。(7/3更新)
※事前の広報で8日(土)の開演時間を13:00と告知していましたが変更となりました。

料金
一般予約 2,500円
一般当日 3,000円
25歳以下 2,000円(予約、当日共通)

会場犀の角(長野県上田市中央2-11-20)
*北陸新幹線・しなの鉄道・別所線 上田駅 より徒歩10分
*上信越自動車道・上田菅平ICより車で約10分
※お車でお越しの方は、「海野町パーク」など近隣の駐車場をご利用ください。

予約https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=p7a9nspi

 

京都/UrBANGUILD公演

日程|2023年7月
28日(金)19:00 終演後トークゲスト:佃七緒(美術作家)【ご予約満席、当日券あり】
29日(土)19:00 終演後トークゲスト:渡辺健一郎(批評家・俳優)
※開場は開演の30分前。
上演は95分程、休憩込み。(7/3更新)

料金
一般予約 3,000円
一般当日 3,500円
25歳以下 2,000円(予約、当日共通)
*いずれの券種も 1ドリンク付き

会場UrBANGUILD(京都市中京区材木町181-2 ニュー京都ビル3F)
*京阪三条駅[6番出口]から徒歩約3分
*阪急河原町駅[1番出口]から徒歩約6分
※駐車場、駐輪場はありません。近隣の駐車場、駐輪場をご利用ください。

予約https://shibai-engine.net/prism/webform.php?d=iadfws5n

 

東京/美学校公演

日程|2023年8月
4日(金)19:00 終演後トークゲスト:三浦雨林(演出家・劇作家)
5日(土)15:00 終演後トークゲスト:檜山真有(キュレーター)
6日(日)15:00 終演後トークゲスト:岡啓輔(建築家)
※開場は開演の30分前。
※上演は95分程度(休憩込み)、トークは60分程を予定

料金
一般予約 3,000円
一般当日 3,500円
25歳以下 2,000円(予約・当日共通)

会場美学校 本校(東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル3F)
*東京メトロ半蔵門線・都営新宿線/三田線 神保町駅 A3出口より徒歩3分
*JR総武線 水道橋駅 東口より徒歩8分
*JR中央線・総武線 御茶ノ水駅 御茶ノ水橋口より徒歩13分

予約https://bigakko.jp/event/2021/shitatame-koen


お問合せ|info.shitatame@gmail.com

協力|シバイエンジン
助成|京都府文化力チャレンジ補助事業(京都公演)
提携|一般社団法人シアター&アーツうえだ(上田公演)
共催|美学校(東京公演)
主催|したため


プロフィール

岸井大輔 きしいだいすけ
劇作家。1995年より他芸術で遂行された形式化が演劇でも可能かを問う作品群を発表している。代表作「東京の条件」「始末をかく」「好きにやることの喜劇(コメディー)」。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科非常勤講師 美学校講師 PARA主宰


photo:Yuki Moriya

和田ながら わだながら
演出家。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院修士課程修了。美術、写真、音楽、建築など異なる領域のアーティストとも共同作業を行う。2018年、こまばアゴラ演出家コンクール観客賞を受賞。2019年より地図にまつわるリサーチプロジェクト「わたしたちのフリーハンドなアトラス」始動。NPO法人京都舞台芸術協会理事長。


photo:ISAMU NAKAJIMA

諸江翔大朗 もろえしょうたろう
京都造形芸術大学卒。京都市内において、Uber Eats配達員として料理を運び、翌朝にはそこから出たゴミを回収する仕事を生業としている。近年では、五代目 坂東玉三郎、ダンスカンパニーのakakilike、アーティストの荒木優光、演出家の和田ながら(したため)、萩原雄太(かもめマシーン)、河井朗(ルサンチカ)らの作品に出演している。記録にまつわる作業集団「ARCHIVES PAY」所属。


長洲仁美 ながすひとみ
茨城県出身。京都造形芸術大学映像舞台芸術学科 映像芸術コース卒業。卒業後に、dracom、大橋可也&ダンサーズ、Marcelo Evelin、したため等の作品に出演。


したため
京都を拠点に活動する演出家・和田ながらのユニット。日常的な視力では見逃し続けてしまう厖大な細部を言葉と身体で接写する、あるいはとらえそこないつまづくさまを連ねるように作品を制作する。俳優の日常生活からパフォーマンスを立ち上げた『巣』より活動を開始。以降、主な作品に、作家・多和田葉子の初期作を舞台化した『文字移植』、妊娠・出産を未経験者たちが演じる『擬娩』などがある。


トークゲストプロフィール

[上田公演・7月7日(金)19:00]

荒井洋文 あらいひろふみ
上田市出身。(公財)静岡県舞台芸術センター制作部に所属後、上田市で文化事業団体 シアター&アーツうえだを発足。演劇を軸とした文化芸術活動のプロデュース等を行っている。2016年、空き店舗を活用して演劇等で使用できる劇場とゲストハウスを備えた民営文化施設「犀の角」を創設。様々な表現活動や地域住民・アーティストの交流の場として運営し、近年はアーティスト・イン・レジデンスに重点を置いた事業も展開。一般社団法人シアター&アーツうえだ代表理事。合同会社犀の角代表社員。上田市交流文化芸術センター協議委員。


[京都公演・7月28日(金)19:00]

佃七緒 つくだななお
大阪在住。2015年京都市立芸術大学大学院(陶磁器)修了。他者の日常生活での周囲の環境や状況への「カスタマイズ」を抜き出し、陶や布、写真、映像などを用いて表現している。近年の活動に、2023年La Wayaca Current (アタカマ砂漠・チリ)にて滞在制作、2022年「RAU都市と芸術の応答体2022」の展示に参加(黄金町・神奈川)、京都HAPSでの企画『翻訳するディスタンシング』の資料集を出版、鳥公園・ゴールを決めない創作 『2020』オープンスタジオ参加(ハイセン/滋賀) 、2021年「包む Tsutsumu」送付型プロジェクト(AIT/東京)など。


[京都公演・7月29日(土)19:00]

渡辺健一郎 わたなべけんいちろう
1987年生、横浜市出身。早稲田大学大学院文学研究科表象・メディア論コース修了。「俳優にとって自由とは何か」をテーマに、俳優として思索と実践を重ねている。ロームシアター京都リサーチ・プログラム「子どもと舞台芸術」2019〜2020年度リサーチャー。演劇教育の現場での経験と、フランス現代思想の知見とを往還した文章「演劇教育の時代」で第65回群像新人評論賞受賞。著書に『自由が上演される』(2022年、講談社)。追手門学院大学非常勤講師(2023年度~)。


[東京公演・8月4日(金)19:00]

三浦雨林 みうらうりん
演出家、劇作家。日本大学 大学院 芸術学研究科 舞台芸術専攻 修了。隣屋 主宰、青年団 所属。芥川龍之介やレフ・トルストイなど既存の作品を原案に、文学作品として書かれた言葉と人によって発話された言葉の差異を際立たせる手法で劇作・演出を行う。誰かの隣に寄り添える作品づくりを目指している。2020年以降、映像・美術を中心とするインスタレーションの手法も用いた演劇作品を発表している。


[東京公演・8月5日(土)15:00]

Photo by Yuji Oku

檜山真有 ひやままある
キュレーター。1994年大阪生。2023年よりリクルートクリエイティブセンター所属。主なキュレーションに2023年『谷原菜摘子の北加賀屋奇譚』(CCOクリエイティブセンター、他)、2022年『フォールアウトファミリーズ』、2021年『オカルティック・ヨ・ソイ』(デカメロン)。主なレクチャー、ワークショップに2023年『私は嘘をつくのが好き:キュレーションのハッタリとリアルについて』(PARA)、2022年『シャッフル・ディストリビューショナル・エディトリアル・ライティングW』(愛知県立芸術大学)。今年の目標を「ゲリラ・ネイチャー・アドベンチャー」に上方修正しました。


[東京公演・8月6日(日)15:00]

岡啓輔 おかけいすけ
1965年九州柳川生まれ、一級建築士、高山建築学校管理、蟻鱒鳶ル建設中。1995年から2003年まで「岡画郎」を運営。2005年、蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)着工。2018年、筑摩書房から「バベる!自力でビルを建てる男」を出版。

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